secret tale
※このssは一応『keep on』の続編となっております。
「ふぁー…昨日はいろいろあって忙しかったなぁ」
朝起きるなり昨日のことを振り返る。
ぼーっとしながら部屋を見回す。
「あれ、アルベルどこ行っちゃったんだろ?」
部屋のどこにもアルベルの姿が見あたらない。
「んー……あ!そういえば」
昨日団員に呼び出されて、ひとつ言われたことがある。
『明日の朝、屋上に来てくれませんか?』と。
(何でだろう?何で屋上に朝行くんだろう)
少しの間、ぼーっとしつつも考えていたフェイト。
「ま、いっか。とりあえず屋上に行ってみよう。多分アルベルもいるだろうし」
部屋を出て屋上についたフェイトはまたぼーっとしていた。
「誰もいないじゃないか…」
(昨日確かに屋上に来るように言われてたはずだよな)
「はぁ。どうしよう」
何故だか急に不安に襲われた。
屋上の真ん中で膝を抱えて座り込むフェイト。
「皆、どこ行っちゃったんだろ…」
そう言って、ため息をつく。
ここ最近ずっと独りになったことなんて、ほぼ無かったから。
――いつだってアルベルが一緒にいてくれたから。
「僕って本当にアルベルが好きなんだなぁ」
クスクス笑いながら言う。
いつも一緒にいることが当然になっているくらいの存在。
出会った時にはこんな風になるとは思っていなかった。
「本っ当、こんなに好きになるとはねー…」
「何ひとりごと言ってんだよ」
後ろから軽く頭を叩かれる。
「痛いな…何するんだよ、アルベル」
「お前がひとりごとなんて言ってるからだろ」
フェイトのとなりに座りながら言う。
「ところで、どこ行ってたんだよ?」
「ここらへん、うろうろしてた」
「何で朝起こしてくれなかったんだよ?アルベルが起きた時に一緒に起こしてくれれば良かったのに」
「お前、よく寝てたから起こさなかったんだよ。昨日いろいろあって疲れてたようだしな」
「アルベルがちゃんと仕事をしてくれないからだろ。もう……昨日のこと思い出したらイライラしてきた」
すっと立ち上がるとアルベルの方を向いた。
そして、アルベルを無理矢理立たせて歩き出す。
「おい、どこ行くんだよ?」
「散歩」
「はぁ!?何言ってんだおま「昨日アルベルの仕事、たくさんやったんだから今日はお休み。……何か文句ある?」
振り向いてアルベルを睨むフェイト。
アルベルから見れば全然怖くないが、これ以上機嫌を悪くさせると後々大変だから、今は従っておくことにした。
「…別に文句なんてねえよ。それよりどこ行くんだ?」
「アーリグリフ城にでも行く?それともカルサアがいいかなぁ…」
「あ?」
「アーリグリフ王に怒ってもらうのもいいけど、ウォルターさんに怒ってもらったほうがアルベルには効果あるかな…」
ブツブツと言い続けるフェイト。
アルベルが仕事をしないことについて全然反省する気がないことに腹を立ててフェイトが思いついたこと。
――それは、アルベルより立場が上の人に怒ってもらうということだった。
「もうこれしか思いつかないからなぁ」
「ちょっと待て、フェイト。わざわざそこまでする必要はねえだろ」
「だってアルベルは僕が言っても聞いてくれないじゃないか。毎日のように僕ひとりで昨日みたいな仕事量じゃ困る!」
頑固なフェイトは本気でアーリグリフ城かカルサアへ行くつもりだった。
そんなことされたら、逆に困るアルベルは必死で止めにかかる。
「待て。仕事が忙しくなければいいんだろ。だったらお前以外のヤツにやらせておけばいいんじゃねえの?」
「他の人だっていろいろ忙しいだろ。僕はアルベルに仕事をして欲しいだけだよ」
アルベルを引っ張り続けるフェイトをなんとかして止めたいが、なかなか歩くのをやめようとしない。
「俺はああいう仕事は嫌いなんだよ。大体あんなもの俺のやるようなことじゃねえ」
「じゃあ誰がその仕事をやるんだよ?」
「……お前」
急に歩くのを止め、アルベルの方を向くフェイト。
「あのなぁ、僕だけじゃ終わらないんだよ、あんなにたくさんあると!…いい加減そのくらいわかってくれよ」
ため息をつきながらアルベルを見る。
「僕だってアルベルひとりで全部終わらせろって言ってるんじゃないんだよ?僕も手伝うからアルベルも一緒に仕事をやってくれればいいんだよ」
まるで子供に言い聞かせるような口調のフェイト。
アルベルだってフェイトに意地悪したくて仕事をしないわけではない。
本当に書類を整理するような仕事が嫌いというだけ。
「……明日からは気が向いたら手伝ってやるよ」
「気が向いたらぁー??絶対やってもらうからな。今までやらなかった分も頑張ってもらわないと」
クスクス笑いながらまた歩き出す。
しっかりとアルベルの手をつなぎながらゆっくりと歩く。
「おい。どこ行くんだ?まさか…」
「目的地を変更して今日は修練場をいろいろまわろうか?」
アルベルの顔を下から覗くように見上げるフェイト。
その仕草に何とも言えない愛おしさを感じたアルベルは、つないだ手を引っ張って無理矢理フェイトを自分の方へ向かせる。
「ちょ、ちょっと…急になんだよ?」
驚いているフェイトのことなど気にもせずに抱きしめる。
「なぁ、今日の朝どうして屋上に呼ばれたか知ってるか?」
唐突すぎる問いにフェイトは首を傾げる。
「俺たちの関係が知りたかったんだと」
「え、僕たちの関係?」
ますます訳がわからないという顔のフェイト。
そんなフェイトの耳の近くで囁くアルベル。
「 」
次の瞬間、フェイトは顔を真っ赤にして叫んでいた。
「な、何言ってんの!?どうしよう…すっごく恥ずかしいんだけど」
「恥ずかしいだけか?」
口の端をつり上げてニヤリと笑いながらアルベルはフェイトの額に自分の額をくっつける。
至近距離から緋色の目で見つめられて、フェイトは思わず目をそらしてしまう。
「…恥ずかしいだけじゃないよ」
「何だ?」
「う、嬉しいよ。アルベルってあまりそういう風には言わないから」
顔を真っ赤にして照れながらも答えるフェイト。
そんなフェイトが可愛くて、恋しくて。お互いの口唇が触れるだけのキスをする。
「でも、やっぱり少し恥ずかしいかな…」
「今更、だろ」
「う…うん。まぁ、そうなんだけど」
結局ふたりはいつだって仲がいい。ケンカしたってすぐに仲直り。
アルベルがフェイトとの関係を何て言ったのかは、内緒。
-end.
後書き。
一応、『keep on』の続編です。
なんだかダラダラ長くなってしまいましたが、どうですかね…ごちゃごちゃした感じで読みにくいですよねー。はぁ…
2004/9/6